巨 人 の 夢

 

 

僕たちが知ってるより、もっともっと大きくて、もっともっと青い空。

僕たちが知ってるより、もっともっと大きくて、もっともっと白い・・・雲の上。

僕たちが知ってるより、もっともっとも〜〜っと大きな巨人が今、大きな大きなあくびをしています。

巨人は今1億年の眠りから目覚めたところ。

巨人は眠っている間に見た夢の数々を思い浮かべています。

 

「夢の数々」といっても、巨人は、とてもとっても、と〜〜っても大きいので、その夢の数たるや、僕たちが知っている「沢山」より、もっともっと、も〜〜っと「沢山」なのです。

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 夢の中である時彼は、隣の国と戦争をしている小さな国の王様でした。
彼は、自分の国の平和を乱す隣の国から自分の国の人々を守るために必死で戦っていました。

 夢の中である時彼は、なんと先程の小さな国が戦争をしている相手国の王様だったこともあります。彼は、隣の国こそ自分の国の平和を乱す敵で、やられる前にやっつけてしまわないと自分の国が危ないと考え、戦い続けていたのです。

 

 夢の中である時彼は、子供をどっちが取るかと言い争っている別れ間際の夫だったこともあります。

「子供にとって母親がいくら大事だと言ったって、生活もままならないんじゃどうしようもないだろう。俺の生活力と何よりも子供を愛する気持ちを思えば、子供は俺と一緒にいる方が幸せに決まっている。」
 
皆さんもうすうす感じているのでしょうが、そう、巨人はその夫の奥さんだったこともあります。

「なにをどう言ったところで子供は母親と一緒の方が幸せなのよ。それに、私はあの子と一緒でなきゃ幸せにはなれない・・・・」

 

夢の中である時彼は、自分が所属する会社の未来を考えて、意見の違うグループと対立しているサラリーマンだったこともあります。

「こんな当たり前のことが何故あいつらには分からないんだ?!この会社がどうなってもいいと思っているのか!!」

当然、巨人はもう一つのグループの人だったこともあります。

「やつらの考えに屈していたらこの会社はダメになる。なんとしてでもこちらの考えを通すんだ。」

 

なにしろ、彼の「沢山」は僕たちが知っている「沢山」より、もっともっと、も〜〜っと「沢山」で、しかも1億年という充分な時間があったのですから、その間に生きた人間の全てが彼の夢のほんの一部でしか無いようにも見えるほどです。

 

 

もちろん、争いばかりではなく、楽しい夢もあれば、悲しいだけの夢もありました。
それどころか、夢の中で巨人は、草や木や花や、虫や魚や動物だったこともあるのです。

 

そして、空だったことも、海だったことも、土だったことも、風だったことも・・・

今、巨人には分かります。憎しみあった人たちも愛し合った人たちも、みんな、みんな正しくてそれで良かったんだと。みんな、みんな、何もかも、愛すべき小さなそして大きな存在だったのだと。だって、みんな巨人の夢で、みんなみんな自分だったんだもん。小さいけど大きくて、大きいけど小さなみんなの思い・・・。草も木も花も、虫も魚も動物も、憎しみ合う人も争う人も愛し合う人も、空も海も土も風もみんなみ〜〜んな自分だったんだ。

 

巨人は、本当に本当にやさしい気持ちになって、もう一度横になりました。そしてまぶたを閉じ、やさしい顔のまんま次の眠りにつきました。さて、この次に巨人が目覚めるのはいつなのでしょう・・・?

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僕たちが知ってるより、もっともっと大きくてもっともっと青い空。

僕たちが知ってるより、もっともっと大きくてもっともっと白い・・・雲の上でのことです。


お  わ  り