12月21日(日)

真殿さん

 オレンジホールでの日本舞踊、今日は本番の日。もちろん昨日みたいな失敗はしない。でも、真殿さんはよっぽど昨日のことがこたえたのか、他の道具の出し入れで僕と組まされるといつの間にか他の人と役割を変わっていた(^_^) まあ、愛嬌のある嫌味でますます親密感が湧くという、そういう世界だ。

 真殿さんは絵描きさん。僕より5〜6才年上かな?(みなさん個性が勝ってるから年齢不詳な人ばかり) 大体ああいう重い思いをするような役には普段つかない人だ。それがそうなったのは、僕自体もたまたまそこらにいて、急に『道成寺』の鐘の綱をふられて、それが重量バランスがとれていないものだったので「こりゃあ、いかん」と近くにいた真殿さんを引っ張り込んだって訳。その時に一日分の握力と腕力を使った感ありでその後はボケていた。そして、その鐘を下ろす時に現場に行くの忘れてて、たまたま引っ張り込まれた真殿さんが死ぬ思いをしたというわけだ。アハハ・・・

 役割分担とか順番とか、そういう段取りがちゃんとされてないとこういうことが起こる。本番の幕開き寸前に「そうじゃない、こうじゃない」というのはみっともない。だから本番の日は気になる出し物が近づいてもその段取りが伝わって来ない時は僕はどんどん聞いていく。分かっている人はその心積もりがあるから平気なんだろうけど、分からないまま平気な人もいるし、なんなく行く時もあれば、ホントに幕開き直前に「そうじゃない、こうじゃない」の場面もたくさん経験している。

 道成寺はただ飾るだけじゃなくて、大道具方もいろいろ役割がある。「振り落とし」といって、ステージ最前面に張ってある大きな幕が、あるキッカケで落ちてくる。(落とすのも大道具。)大道具はそれをかぶるように受け止め上下(カミシモ)へとはける。一面に張られていた幕が一瞬でのいた舞台には大きな鐘がぶら下がり、地方(和物オーケストラ)さんがズラリと並び、桜景色の中にたくさんの立ち方さん(踊り手)がいるあでやかな舞台が出現する。

 今回はその役割分担がまだ聞けてない。鐘の上げ下げのために綱元に行き、真殿さんにそのことを言うと、真殿さんの返事が良かった。

「お前は鐘を下ろす時にちゃんとここにくればえいが。あとは考えるな。」

 アッハハー。よっぽど昨日のことが響いているな。よし、そうしよう。それでことは済んでしまった。その場その場で役割はふられ、それなりに済んでしまった。

 これからはこれで行こう。段取りは大切だけど「あとは考えない」精神はラクだ。素敵なムセキニン(^_^) 真殿さんのその落ち着きは学ぶところ多し。

 今日の打ち上げでも昨日の僕の物忘れは話題にのぼった。僕をあの手この手でからかうように責めながらも真殿さん曰く・・・

「あれで、宮城が『スミマセーン』言うてすまなそうに来たら、腹が立ったろうけんど、ニッコニコして来るもんねゃー、怒る気が失せてしもうたわー」

 真殿さん、この場で言っときます。ゴメンナサーイ アンド アリガトー。又、一緒に組みましょうネー、嫌だろうけどーー(^_^)(^_^)