2005年10月8日(土)
立石美智子モダンバレエ発表会、本番当日。
このバレエ教室の発表会にはかれこれ10年以上関わっている。舞台ごとではいつまでたっても新人みたいなスタンスでいる僕でも、印象に残っている子もいたりする。
時は来て時は行き、そのメンバーも少しずつ変わっている。パンフレットの、OBからのメッセージのページに去年まで舞台で踊っていた子のコメントがあったり、一年に一度、この発表会でだけ再会する以前の病院勤め時代の仕事仲間Sさんの姉弟のお姉ちゃんの方はバレエ教室をやめていたり・・。
立石先生のバレエのクラスは大所帯だ、100人を優に超えている。1部が終わった後での記念写真の時など、舞台上にたくさんのバレリーナが並んで、みんなが写真に納まる体制になるまでにも結構な時間がかかった。
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宮澤賢治、「銀河鉄道の夜」・・・。
「カンパネルラ、僕も君と一緒に行くよ。」
「ジョバンニ、君は僕と一緒には来れないんだよ。」
カンバネルラはうつむいたまま、申し訳なさそうな顔をしてそうつぶやいた。
こんなシーンがあったかなかったか、僕の中で勝手に出来上がってしまっている最後の辺りの1シーン。
『雨ニモマケズ、風ニモマケズ』と簡単に引用したりするけれど、賢治のことや、その作品にどれくらい触れたかというと、それはかなりあやしい。
僕の場合、今年の夏前の頃に市民図書館で見つけた朗読CDでこの年になって初めて全体の作品群に触れた。
宮澤賢治に出会うことなく去っていく命もあれば、『雨ニモマケズ・・』の有名な1フレーズだけで賢治を知っているような気持ちになった命もあり、その世界に引き込まれ、それなしでは世界が成り立たないほどに彼と生きた命もあるだろう。
後に残されたものがどうであれ、賢治の世界はそれに関わらず、凛としてそこにある。彼亡き後、彼にとってもその後のことが認識できないとしても、彼の残したものは凛としてそこにある。
世にいわれる名作というものは、きっとそういう生命を持っているのだろう。
曽我氏が考えた(?)冒頭の川を流れて行く灯篭のシーン、龍史君が現場で描いた銀河鉄道の空を翔る汽車。我々の側では、仕込みや本番でそれをどう動かすか、飾るかのノウハウが先行するが、客席から見る目には賢治の世界をバレエで表現する舞台の1シーンとして印象深く残っただろう。
客席から見てみたかったな・・。