2009年7月24日(金)

芝村さんコンサート

 今日は日高村の「屋根の上のがちょう」という喫茶店で友人の芝村さんがやるコンサートの手伝いをやる日。

 座席数は通常で35席、今日は特別に席を増やして50席目標という、規模はそう大きくないコンサートなのだが、こういうことは50席も500席も変わりはしない。なにかを表現するのに50だからこの程度、100なら少し頑張ろうか、500だったら全力出すぞなんて器用なことが出来る人は表現者としては逆に大したことないんじゃないかと思う。

 だから、僕も今日はコンサート一色の日にしたいのだが、コンサートの会場準備は4時からで午前中は何をどうしようにも何も出来ない。

 そんなわけでパソコンのことをやるのだがこれはこれで中身の詰まった作業になる。再起動を繰り返すデスクトップ機のCPUを変えたら見事に蘇ったなんてこれだけでも達成感のある作業。何故かそんなことがいくつか今日は妙に気持ちよく進む。だんだん今日がコンサートの日だと言う実感が薄れて来た。ホントにそういう日だったのかなぁ・・・

 これはいかん!すぐに芝村さんに電話した。

 「おはようございます。今日はよろしくお願いします。4時前には日高の方に行くようにしますので。」

******************

 さてさて、4時、日高村。

 「今日舞台監督をやってくれる宮城さんです。」

 芝村さんが他の手伝いの方に僕を紹介する。

 「いやいやそういうのやめましょう。ただの手伝いですから・・・」

 そういう力や実績があれば舞台監督という呼び方にもびびらないけど、今回は一度会場をどうするかの打ち合わせに来ただけで「何かを共に作る」ということは何もやっていない。雨を降らしてもいけないし、僕は力みの無い一手伝い人としてこのコンサートのお手伝いに来たのだ。僕は雨男なのであまり構えすぎると雨が降ってしまう。大体舞台仕事では僕ははじにはじにいるようにしてるんだ。

 「じゃあ、本番中の進行管理係りの宮城さんです。」

 おう、分かりやすい。今日の僕は会場作りとそれをやればいいわけだ。

 極めて軽い感じでことを進め半分まだ実感が湧かないままなのだが、開場の時間、開演の時間が近づくにつれ舞台心が湧いて来た。

 「店内の照明を半分くらいにしてもらえますか?・・・ハイ、それでお願いします。」

 「開演の時にはこのザワザワ感を一度無くしたいんで7時5分ジャストで僕が言いますから照明を全部落として5〜6秒したら今の明るさに戻してもらえますか?」

 忙しいお店の人に遠慮なくお願いし始めた。

 「で、オルガンのKさんは照明が戻ったら出て行って準備が出来たら僕に合図を下さい。そこで僕が芝村さんにキューを出しますので。」

 オルガンのKさん、オルガンの前に座ると楽譜を見つめたままいつまでもその姿勢。

 「Kさん、いい?かまん?」 声を殺して尋ねる。

 「アッ、ハイ・・・」

 芝村さん、キュッ!

 芝村さんは草笛を吹きながらゆっくりと店の外から店内へと向かって行く。

 ハイ、僕の役割終わりネー。

 店内にオルガンの音と芝村さんの歌が流れ始めた。

 **********

 今日のコンサートは新聞記事の反響もあってチケット当日買いの人には開演10分前まで待ってもらい、入れなければ8月7日の追加公演に来て頂くようお願いし、今日は前売りの人と予約済みの人を優先するという心苦しい事情もあった。

 そんな中、少し振り出した雨の中で、芝村さんが店の中に入って行くところまで見届けている女性のお客さんがいた。この方は当日客で最後まで外で待っていてくれたたった一人の人。他の方は今日のところは見送って帰られた模様

 「今日は座れそうもないんで、始まるまでの雰囲気を味わっておいて、また8月7日に来ようと思ってるんです。」

 この方が他のスタッフの人に言っているのを僕は聞いていた。

 店内にはあと3つ座席が空いていて予約しながらまだ来ていない人があと二人。

 おう、座れるじゃないか。早く伝えないとあの人帰っちゃう。

 「最後の一席が空いてるんですけど、入っていかれませんか?」

 その方は本当に嬉しそうに店内に入り、コンサート中も嬉しそうに楽しそうに芝村さんの歌に体をゆらし言葉に頷いて・・。

 きっと芝村さんの熱心なファンなんだろうなぁ。その素直で健気な様子にこちらがその人のファンになりそう。

 こんなふうにまっすぐ人を好きになれて応援できる人がいるんだ。

 ************

 帰りはしっかり雨だった。