2009年10月9日(金)
金曜日はU田さんの日。
U田さんの白内障は今月の最後の週に手術の予定。
「これまで歯医者以外病院にかかったことがないですからねぇ、どうにか医者にかからない方法はないものかと思うばかりで、もうこの世の終わりとばかりに憂鬱ですよー。」
呼吸困難で今にも死にそうな時に回りの人が医者に連れて行こうとしたら、「病院にかかるくらいなら死んだ方がまし」と拒絶し、1週間くらい這うような生活をして自然治癒で治ったというU田さん。他にもいろいろなエピソードがある。
僕から見れば、今や手術の方法が進歩して痛みも無く、手術時間通常15分、日帰りも出来る白内障の手術より、医者にかからないU田さんの治癒に至るまでの我慢強さの方がよほどすごいことに思える。
そのU田さんが、今回、手術するしかないか・・と思っているのは、老人性白内障は病気というよりは老化の一症状で、手術以外に視力を回復する方法はなく、自然治癒の可能性はないということから。
「自分はこれでいい」と言い切れば左眼が見えないまま過ごすことも出来るが、そのまま置いておくと今度は緑内障になる可能性もある。
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「大丈夫ですよー。」
当事者に取っては効果が無いだろうと思いつつ、僕も他に言いようがない。もう何度となく調べた白内障に関する情報をU田さんの気の済むまで一緒に調べて行く。
そういうことをしているところへ、U田さんに電話が入った。
それは、近くの県の職員寮の自転車置き場にU田さんの自転車が置いたままになっているとの連絡の電話。県庁の福利厚生の係りの人が自転車の持ち主を調べて連絡を下さった。
この自転車は8月にU田さんが愛宕通りによさこいを見に行った時に無くなったもの。もう出て来ることもなかろうとU田さんは次の自転車を購入されているのだが、それが今になって出て来たという。
「先生、すみませんけど、愛宕まで車で積んで行ってもらえませんか。」
ハイハイ、お安い御用です。
愛宕では県の職員の方が待っていて下さった。僕も道の脇に車を止めてそこに行って見ると、自転車はまだ新しく、それもきれいなままタイヤの空気も抜けていない。こんないいものが一度無くなってまた持ち主の元に返って来るなんて、なんとも強運な人。
「私はこれに乗って行きますから・・。」
U田さんは係りの人にお礼を言うと、心配する僕を尻目にその自転車をスイスイとこいで行かれた。
その様子はとても白内障で不便している人のようには見えない。
U田さんって元気な上に強運なんだよなぁ。自然治癒の話の他に「強運」のエピソードも沢山あるんだ。
「先生は強運だから、今度の手術もその強運さできっとなんでもないですよ。」
「それがねー。病院にかかると思うともう憂鬱なんですよー。」
これは手術が済むまではどうしようもなさそうだ。