2010年2月19日(金)
今日のU田さん宅での映画タイムに見た映画は「土」。
「地味で変化の少ない映画ですから、退屈かも知れませんよ。」
とのことだったのだが、実際に見てみるとすっかり引き込まれてしまった。
貧しい農村の、とりわけ貧しい家族の生活と事件を描いている映画。農民の生活自体は確かに地味で、我慢我慢の日々に、何かがうまく行きそうになると更に別の苦難が起こるというような話。
思うようにことが進まないと、はがゆがったり、卑屈になったり、困ったり、悲しんだり、人を責めたり、人によっては逆にいたわり合い助け合い、人間自体は昔も今も変わらないのだろうが、それがあの貧しさの中で繰り広げられると、なんとも人間というものが愛おしくなる。
映画の中に見る昔の貧しさは、今の貧しさとは桁が違うのだ。
当事者にして見れば、その様子に感動されたり愛おしがられても何の意味もないだろうが、そういう環境の中で状況に抗ったり受け入れたりする生き方に「本当」があるように思えて来る。あの登場人物たちは確かに人生を生きていた。
これまでに見た「馬」や「綴り方教室」にもそういう感慨があったなぁ。
どうも僕には物の豊かさのない、貧乏といえばほんとに貧乏が貧乏な時代に惹かれる傾向があるようだ。自分がその中に放り込まれれば到底耐え切れないかも知れないのに・・・
「今は豊かな時代だといいますけどねぇ、豊かさの中での孤独の方が昔の貧乏なんかよりよほど寂しくてつらいものだと思いますよ。昔はみんなが同じように貧乏でしたから、近くに困っている人がいれば、お互いに助け合ったものですよ。今は近くに困っている人がいたら、なるべく関わりを持たないようにしますからねぇ。私たちの時代より、今の若者たちの方がよほど大変な時代に生きてると思いますよ。」
いつかU田さんがそうおっしゃっていたのが、今にして分かるような気もする。
戦争という生死に関わる体験をし、実際にその中で沢山の人が命を落とした、そういう時代を生きて来ながら、U田さんは現代の若者たちを気の毒がられている。