2015年7月23日(木)

インドの童話

 20代後半の頃に、世界の童話を好んで読んでいた時期がある。その中で今でも影響を受けてるのがインドの童話のある話。

 とんでもない美人の奥さんがいる農夫がいた。その美しい奥さんに横恋慕した王様が奥さんを連れ去ってしまう。

 奥さんを返して欲しいという農夫に王様は、言ったことをやりとげたら返してやると無理難題をいくつもふっかけるのだが、最初の難題は、到底出来るはずがない広大な面積の畑を1日で耕したら奥さんを返してくれるというもの。

 すると、その美人の奥さんは農夫にこう言った。

 「これまでどれだけ耕したとか、この後どれだけ耕さないといけないかと考えてはいけませんよ。ただただ耕せばきっと出来ますから。」

 どうもこの美人の奥さんはただものじゃないらしい。魔女っぽい力のある女性らしいんだよねぇ。

 で、農夫は奥さんに言われた通り、これまでどれだけ耕したとか、この先どれだけ耕さないといけないなんてことを考えずに耕し続けたら、なんと1日でその広大な畑を耕してしまった。というか、気が付いたら耕していた。

 その後、どんな難題がいくつくらい出たのか忘れたけど、農夫は奥さんの助言のもと、ことごとくその難題を実現して、最後には奥さんを取り戻した。

 この、「これまでどれだけ耕したとか、この先どれだけ耕さないといけないとか考えなければ、きっと出来る」というのが僕の気持ちにとっても響いたんだよねぇ。その頃僕はとある小売業の経理にいて、毎日地味でコツコツの作業を大量にこなしていた。もちろん、それは同じ部屋の仕事仲間も同じことなのだが、僕にはこの取り組み方がとても力になった。

 単純で大量な作業をする時には、これまでどれだけ済ましていて、この後どれくらい残っているかを再三見ているとそれだけでストレスにやられてしまう。もちろん、時間見積もりとか、計画的な段取りは大事だけど、それは必要最低限にして、あとはただただ目の前のことに集中し、過去を振り返らない、未来を見晴らそうとしない方が、気がついたら済んでたというラッキーに到達することが出来る。

 谷病院、今日はそういう作業だったのネェ。インシ、アクシの入力が沢山あって、その中身は真剣に働く医療現場の重みがあって、これまでどれだけ入力したか、この後どれだけ入力しないといけないのか、はたまた、今日中にそれを入力出来るのか、そういうことを考えながらやってたらきっと出来なかったと思う。でも、僕の頭の中にはあのインドの童話がある。

 終業10分前に入力は終わった。

 谷病院には、インシ、アクシの入力を今日中に済ませ!というような王様はいないから、僕そのものが王様であり農夫なんだろうけど、それなら絶世の美人の賢くもつつましい奥様も側にいて欲しかったかなぁ!!!

 あの本どこに行ったんだろう?出て来たらしっかり永久保存版でPDF化しようと思う。

 奥さんがとらわれの身でありながら夫に助言出来たというのが童話の童話たるところかも知れないが、そこいらももう一度確かめたいんだよねぇ。